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日本初、政党のガバナンスコードづくり。半年間の挑戦の軌跡。

自民党は、5月31日の総務会で党運営や組織の在り方を示す指針である「ガバンナンスコード(統治指針)」を了承し、正式に発表しました。政党としてのコード制定は調べた限りは前例はなく、おそらく世界でも初めての試み。この半年間、私も党改革実行本部内に設けられたワーキングチームの事務局次長として策定に携わってきたこのプロジェクトの経緯と背景を振り返ってみたいと思います。

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党改革実行本部事務局長の山下たかし先生から、「弁護士だったからこういうの得意でしょ」と軽い感じでお声がけいただき、ワーキングチームの初会合に参加したのは1月12日のこと。そこからほぼ毎週、座長である上川陽子先生を中心に党改革実行本部の部屋に集まり、密度の高い議論を重ねてまいりました。

 そもそも、「ガバナンスコード」なるものとは、いったい何なのか?聴き馴染みのない方も多いかと思います。

 もともとは英国などで企業の経営・運営のためにつくられるようになった、組織の行動を律するガイドラインがルーツとなります。具体的な禁止事項が定められ、違反すると懲戒や解雇などの処分が課される組織の「規則」とは異なり、ガバナンスコードは「こうあるべき」というやや抽象度の高い方向性を示すもの。違反しても罰則があるわけではありません。その代わり、「遵守または説明(コンプライ・オア・エクスプレイン)」と呼ばれる原則に従い、組織が自らコードが遵守できているか、遵守できていないならそれはなぜなのかをちゃんと説明する責任を負います。

 ガバナンスコード策定のきっかけは、昨年秋の自民党総裁選の議論。当時、自民党に対してその体質や組織運営について、世間から厳しいご指摘をいただく状況がありました。そこで今の岸田総裁が、総裁選公約の中で、党としてのガバナンスコードをつくる方針を打ち出したのです。

 選挙前であり、私はまだ国会議員ではなかったタイミングでしたが、弁護士時代にコーポレートガバナンスに長く携わっていた関係もあって、政党にガバナンスコードを導入するといったいどんなことになるのか、非常に興味を持ったのを覚えています。後にまさか自分自身が策定に関わることとなるなんて、その時点では思ってもいませんでしたが。

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岸田総理からも、ガバナンスコード策定へ向け、力強い後押し。

今回のガバナンスコードの策定にあたっては、国会議員、地方組織、党職員、外部有識者など内外の多くの意見を参考にするとともに、自民党の立党宣言や綱領など、55年の結党以来の多くの歴史的な文書を徹底的に読み直し、自民党のアイデンティティとは何かを繰り返し議論しました。偉大な先人たちの高い見識と格調の高い文章力に圧倒されながらも、今の時代にあった価値観を抽出しようと格闘を重ね、結果として、党運営の柱となる以下の5つの「基本原則」を定めることとしました。

1:政策立案力の強化
2:多様な人材の育成と登用
3:地方組織との連携強化
4:広く開かれた対話とデジタル技術の活用
5:党運営の新たなルールの確立

 これら基本原則ごとに5つずつ、合計25の個別原則を定め、あるべき政党の姿の実現へ向けた具体的な施策の方向性や留意点を記載してあります。具体的には、国際的に遅れていると言われる女性議員の発掘・育成に向けた中長期計画を策定し、その進捗状況を継続的に確認・検証していくことを定めました。また、最近も青年局によるメタバース街頭演説の発表が話題になりましたが、党として開かれた対話の促進に向けてデジタル化やオンライン化を進めていくことも掲げています。さらに、全ての国会議員のコンプライアンス研修の受講徹底や、「ご意見ボックス」の常設による風通しの良い組織づくり、疑義を持たれた場合の丁寧な対外説明など、コンプライアンス体制の強化についてもできるだけ具体化を試みました。

 今後は、外部有識者を含む新たな「ガバナンス委員会」が、ガバナンスコードの遵守状況を検証し、毎年報告書にまとめて公表することとなります。政党運営の実態は、国民の側からすればとかく見えづらいもの。こうしてPDCAを回す仕組みをコードに組み込み、説明責任を課すことにより、議員も関係者も、コードを自然に意識するようになり、党を前向きに変えていく原動力となることを期待しています。自民党がさらに開かれた身近な存在となっていくために、ガバナンスコードが活用されていけばうれしいかぎりです。

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自民党の最高意思決定機関の総務会。緊張感が漂います。

今回のガバナンスコードの策定にあたっては、三人の素晴らしい外部有識者のメンバーにワーキングチームメンバーに加わって頂いたことが大きな力となりました。コーポレートガバナンスの第一人者である、武井一浩弁護士は、私の弁護士時代からお世話になり尊敬申し上げている方。企業版ガバナンスコードの実態や、それを政党に当てはめる場合にどこがポイントとなるか、貴重な意見を賜りました。政党政治研究で知られる一橋大学の中北浩爾教授は、歴史的な視点から政党におけるガバナンスの問題点を鋭く指摘くださいました。また、国際政治学の三浦瑠麗さんは政治学者としてのご意見もさることながら、永田町の内側に籠もってしまいがちな議論を世間一般に開いていく視座を我々にもたらしてくださいました。改めて心から感謝申し上げます。

 最後に、経験の浅い私に大きな役割を任せて頂き、辛抱強く、暖かく導いて下さったチームメンバーの方々にも感謝申し上げたいと思います。常に明確な方向性を示し、即座に決断を下してくださった上川陽子座長、元検察官としてコンプライアンスの専門家であるだけでなく的確なプロジェクトマネジメントで引っ張って下さった山下たかし事務局長、デジタル化など豊富なアイディアと実行力で常に変革意識を注いで下さった平将明先生、緻密なチェックと配慮で議論の内容を継続的に官邸と水面化で調整して下さった村井ひでき総理補佐官、当選同期ながら元高知県知事として豊富な経験を持ち、地方組織との連携について引っ張って下さった尾崎正直議員。プロジェクトをご一緒させていただくことを通じて、皆さんから多くを学ばせて頂きました。

 本当の勝負はコードの運用が始まるこれからです。このガバナンスコードをきっかけとして、多くの方にとり日本の政治が、よりわかりやすく、より前向きで明るいものとなる一歩となるよう、引き続き全力を尽くして参ります。

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メディアの皆さんからも高い感心。わかりやすい説明を心がけて参ります。
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