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どーん。どーん。静寂の中、みぞおちにずしりと響き渡る19発の空砲。忘れもしないあの悪夢の7月8日から80日日。安倍晋三元総理の国葬が武道館にて厳かに執り行われました。
混雑を避けるため国会議員は2時間前に国会正面からバス移動。沿道に目をやると 、花を手にもった長い長い人の列がすでにどこまでも続いています。
安倍元総理は、私にとっては政治の世界でのはじめての上司でした。2006年の第一次政権で父が官房長官に就任したのを機に、当時勤めていた弁護士事務所から急遽出向する形で官房長官秘書官に。静寂の中に独特の緊張感の漂う官邸5階の執務室に突然放り込まれ、最初は戸惑うばかりでした。でも、教育基本法の改正、防衛庁の省への昇格、公務員制度改革など、戦後の国のデザインを時代に合わせてアップデートする厳しい改革に次々挑戦する総理の背中に惹かれ、寝食を忘れ、無我夢中でお支えする日々でした。大量の書類を抱えて走りまわる私を見かけては、「もう慣れましたか」といつも暖かい笑顔で声をかけてくださったのが安倍総理でした。
「そんな、覚悟と、決断の毎日が続く中にあっても、総理、あなたは、常に笑顔を絶やさなかった。いつも、まわりの人たちに心を配り、優しさを降り注いだ。」
菅前総理弔辞(2022.9.27)
菅前総理の弔辞の言葉が、大きな遺影のほほえみと共に心に沁みます。
海外からも多くの要人が弔問に来てくださりました。中でも嬉しかったのは先月ベトナムでお会いしたフック国家主席の来日。我々自民党青年局から、安倍元総理と個人的に親交の深かったフック主席の国葬参加をお願いした際、安倍総理の外交実績への最大級の敬意と昭恵夫人が送られた弔辞への丁寧な返信に心打たれたことなどを披露してくださりました。その際は来日を明言されませんでしたが、今回会場でお姿を拝見し、思いが通じたことに感激しました。
夕方、イギリスのBBCから国葬についての取材依頼。世界中にライブ中継とのことで不安もありましたが、こうした時期だからこそ国葬の意義につき海外に正しく発信しなくてはと、思い切ってお受けすることにしました。キャスターからは、葬儀の様子や安倍政権の実績などについてのいくつかの質問に続き、国内で多くの方が国葬に反対の考えを表明していることについて考えを問われました。
「国葬の実施がこれほど政治問題化されてしまったことを大変不幸なことだと感じている。しかし忘れてはならないのは、安倍晋三元総理が単に史上最長の総理であるだけでなく、選挙戦の最中に政治的なテロにより命を落とされたという事実。こうした非道なテロを決して許さず決して屈しないという姿勢を国内外に示す意味で、過去の慣例を越えて国葬により格式高くその死を弔うとの岸田首相の判断を私は支持する。」
事件直後、安倍元総理を見舞った悲劇に多くの国民が深い弔意を表明し、私の地元に設けられた献花台にも置き場のないほど花が届けられました。しかし、その後統一教会の過剰献金に関するメディアの報道が過熱していく中で、いつしか国葬の是非と統一教会の問題が併せて論じられる場面が目に付くようになり、最近ではどちらが加害者でどちらが被害者かわからないような目にあまる報道まで。こうした議論の混乱の中で静かに故人の冥福を祈る社会の空気が徐々に失われていく様子に苛立ちともどかしさを感じていました。
国葬の意義について、政府としてもより丁寧なコミュニケーションができなかったか、よりきめ細やかな手続きを踏むことができなかったか、反省すべき点は多いと思います。しかし、議論の本質は変わりません。どんな理由があれ、暴力により民主主義のプロセスが脅かされることがあっては絶対になりません。そうした暴力行為に理解を示したり美化することも、更なる悲劇を招来しかねない極めて危険な行為です。テロにより尊い命を失った指導者をどう国として弔うかという議論と、統一教会の信者とのトラブルの問題とは、本来全く別の論点です。無事国葬を終えることができ、これから落ち着いた環境の中で故人を偲ぶ環境が取り戻されていくことを願っています。
「あなたはわが国憲政史上最も長く政権にありましたが、歴史は、その長さよりも、達成した事績によって、あなたを記憶することでしょう。」
岸田総理の弔辞の言葉に深く共感します。若い人たちが希望を持てる国へ、残された多くの課題に全力で取り組み、自分なりの弔いと恩返しを続けて参ります。
合掌。