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OpenAI日本進出の背景。改めて注目されるAIホワイトペーパー2024

OpenAIの日本進出、マイクロソフトの日本への大規模な投資、そして新たなAIホワイトペーパーの発表など、最近AIをめぐる大きな発表が相次いでいます。日本が世界のAI技術の最前線でどのように位置付けられているのか。日本の今後進むべき道は。この一年の政策的な動きと最近の重要な出来事の背景について取り上げたいと思います。

OpenAIの日本進出と新たな日本語カスタマイズモデル

4月15日、OpenAIが東京に新たな支店を開設し、日本語に最適化された新たなAIモデルを発表しました。この新モデルは、日本語の繊細なニュアンスと文化的背景を理解し、ユーザーにとって非常に有益なものです。会見に臨んだ同社のアナ・マカンジュグローバル担当副社長は、日本を選んだ理由について、昨年私たちが策定した自民党の「AIホワイトペーパー」の存在や、「G7広島サミット2023」において日本政府が生成AIの国際的なルール作りを主導した点を挙げ、AIの開発や研究に前向きな日本の社会環境が彼らの決断に大きな影響を与えたことを強調しました。

同社のサム・アルトマンCEOが来日したのが約1年前。岸田首相との面会後、自民党のAIの進化と実装に関するプロジェクトチーム(平将明座長、以下「AIPT」、過去資料はこちらから)に登壇し、日本に対する7点のコミットメントを発表しました。

2023年4月10日・サムアルトマンCEO来日

その後も同社とは水面下で対話を継続。今回の発表も含め、昨年のコミットメントの一つ一つを誠実に実現しようと真面目に取り組んでいる姿勢が伝わってきました。今回の発表の前にもアナ・マカンジュ副社長のチームと意見交換。先週発表した新しいAIホワイトペーパー2024について説明しようとすると、「もう読んできたわ。翻訳はもちろんChatGPTで(笑)」。日本のAI戦略に対する同社の深い理解と支持が伝わってきました。新たな東京オフィスにはこれまでの海外拠点にはない機能も実装される見込みで、最先端のAIの利活用を模索する多くの日本のビジネスにとっても心強いパートナーとなっていくことが期待されます。

マカンジュ副社長チームとの意見交換(2024年4月15日)

マイクロソフトによる4400億円の大型投資とその背景

もう一つ、最近勇気づけられたニュースが、岸田首相の訪米に際して発表されたマイクロソフト社による日本のAI及びクラウド基盤強化に関する29億ドル(4400億円)の大規模投資。同社によれば、今後 3 年間で非正規雇用を含む 300 万人を対象にリスキリングの機会を提供するとともに、同社として日本初となる研究拠点を新設し、さらに、サイバーセキュリティ分野において日本政府との連携を強化していくとのこと。我が国のIT分野の成長に最も欠かせない「人への投資」に大きく寄与するパッケージとなっています。

この決断を主導したのが同社プレジデントのブラッド・スミス氏。昨年4月に来日し、我々AIPTのメンバーと非公式な会合を行なった際、日本のAI政策や私たちのAIホワイトペーパーへ強い関心を示していました。完成したばかりの英語版を手渡すと「この報告書を一行一行読み込んで、日本の期待に応えるようパートナーシップを深めていきたい」との力強いメッセージ。元は一流弁護士として活躍していたスミス氏、物分かりも決断も早いです。数ヶ月後にはAI用のAzureサーバーの国内設置を発表。また今回、さらに日本に対する長期的なコミットメントを表明。まさに有言実行です。

2023年4月22日:ブラッドスミス氏の来日

このような国際的な企業が日本での投資を決定する背景には、我々の政策が世界標準を満たすか、それを超える必要があります。マイクロソフト社の大規模投資は、日本がグローバルなAI技術の中心地の一つとしての地位を確固たるものにするための重要な一歩となります。

起草した「責任あるAI推進基本法」が自民党の正式な政策提言に

このように海外からも大きな注目を集め、実際の対内投資判断にも影響を与えてきた自民党の「AIホワイトペーパー」。先週、その後継となる「AIホワイトペーパー2024」が自民党のデジタル社会推進本部で了承され、公表されました。その目玉の一つとして、本年2月に私が仲間の学者や弁護士の方々と一緒に起草し、発表した「責任あるAI推進基本法(仮)」が、特に大きな修正もなくホワイトペーパーに取り入れられ、正式に自由民主党の提言として採用されました。

責任あるAI推進基本法の骨子

「責任あるAI推進基本法」は、AIの利活用による国民の権利利益の侵害リスクを最小化し、AIによるイノベーションの健全な発展を最大化することを目的としています。この法案では、先進的で強力なAI基盤モデル開発者に対し、7項目の体制整備義務の遵守状況を定期的に政府に報告すること、および政府がそのモニタリングと監督を行うことが定められています。また、違反が発覚した場合には、課徴金や刑罰を科す等の罰則が設けられています。一方で、技術の進化の速さに遅れることのないよう、報告義務の具体的水準や技術仕様等については、民間事業者や業界団体と協力して策定する「共同規制」というモデルを採用しています。

2月にこの法案の構想を発表して以来、国内外の多くの政府関係者やIT企業の政府担当者から訪問や照会を受け、その都度丁寧に法案の趣旨を説明してきました。最初はイノベーションを阻害するルールが誕生するのではないかと警戒していた方も、要求される報告水準が米国と同様のものであることや、特定のAIの利活用を制限するものではないことなどを説明すると、皆さん安堵の表情で帰られます。より厳しい法規制の導入を決めたEUのAI法の起草者も「我々とは異なるが日本の立場であれば合理的な規制デザインだと思う」と話し、国際的にも徐々に理解が広がっている手応えを感じています。

私は昨年9月の政務官就任に伴い既にAIPTの事務局長を退任していますが、平井卓也本部長、平座長のリーダーシップのもと、後任事務局長の尾崎正直さん、小森たくおさんなど優秀な同期が中心となり素晴らしいAIホワイトペーパー2024を取りまとめて下さいました。心から感謝と敬意を表します。

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世界一AIフレンドリーな社会へ

OpenAIの日本進出、マイクロソフトの大規模な投資、そして新たなAIガバナンスに向けた立法提案が採用されるなど、急速に進化するAI新時代において日本も一定の存在感を発揮してきました。これらの進展は、岸田首相をはじめ、政府・与党一体となった私たちの継続的な取り組みと国際社会との連携による成果であり、今後も日本がAI分野でのリーダーシップを発揮し続けるためには、これまで以上に官民力を合わせて努力を続けなければなりません。

AIによる技術革新が様々な社会課題の解決につながる明るい未来の兆しが見え始めています。世界一AIフレンドリーな社会の実現に向け、引き続き全力で取り組んで参ります。これからも皆さんのお力とお知恵を貸してください。

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