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3月2日(水)、岸田文雄総理大臣が、ウクライナ避難民の日本への受け入れを表明しました。
避難民の受け入れは、私自身、強い問題意識を持って当初から悩み訴えてきた問題であり、我々の訴えに耳を傾け、スピーディかつ大胆な政策方針決定を成した岸田総理のこの度の英断に心から敬意を表します。
2月24日(木)、北京冬季オリンピックの閉会を待ち構えていたかのように、ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、世界に衝撃が走りました。海外の友人たちからも、知り合いや友人の安否を心配する悲痛で緊迫したメッセージがSNSを通じて大量に届くようになりました。紛争地域に直ちに自衛隊を派遣することが難しい日本において、我々はいったい何ができるのか。
26日(土)、無力感と焦燥感を抱え、私はツイッター上に以下のように書き込みました。
「今後数百万人にのぼりそうなウクライナ難民につき、日本も一部受け入れ表明を提案したい。難民政策については極めて消極的と言われ続けてきた日本だが、今回は単なる「支援」を超え「受け入れ」まで踏み込んでウクライナの人々に寄り添う意義は大きい。党内でも提起したい。」
Twitter2022年2月26日投稿より
ツイートへの反響は想像以上に大きいものでした。「トラブルの元だからやめてほしい」などと反対する声も多く頂く一方、驚くほどたくさんの応援メッセージや「いいね」も頂きました。また与党だけでなく何名かの野党議員の先生からも「私も、私の党内で提起します」など、ありがたいメッセージを頂き、思いを共有する人はたくさんいるんだ、と意を強くしました。
しかし、官邸や外務省などにいる知人らに相談すると、実際の難民受け入れへのハードルはかなり高いことがわかりました。政府としては、これまで難民をあまり受け入れてこなかった過去の政策との整合性が問題となるし、与党内から激しい反対の声が上がる懸念もあるというのです。
ここはしっかり論点を整理して臨む必要があるな、と考えた私は、難民受け入れの意義と理由をより具体化してFacebookに投稿し、政府や党の関係者にもお送りして相談しました。
「緊迫の度合いを深めるウクライナ。今後は数百万人にのぼりそうなウクライナ難民につき、日本も一部受け入れを表明することを提案したいと考えています。理由は主に3点です。
一点目は、言うまでもなくウクライナの方々への人道支援の意義です。成人男性が総動員令の対象となる中、既に女性や子供など大量の市民が、ポーランドなど近隣諸国に避難する動きが加速しています。私たちと同じように昨日まで平和な日常生活を送っていた多くの市民が、突然のロシアの暴挙に生活や住む場所を奪われ、今も不安と寒さに震えています。その中には日本に暮らすウクライナ人のご家族や親類なども含まれているでしょう。難民の数が近接するヨーロッパ諸国の受け入れ容量を遥かに超える事態も予想される中、「人権外交」の推進を掲げる岸田政権としてその具体的な覚悟を世界に発信する好機です。
二点目は、ヨーロッパの危機にこれまで以上に主体的に支援の手を差し伸べる外交的意義です。今回のウクライナ侵攻を契機に、力による現状変更を窺う機運が世界各地に拡散することが懸念されます。近い将来、同様の事態が朝鮮半島や台湾など、東アジアで生じる事態も想定されます。目の前のヨーロッパの危機に消極的な対応に終始していては、将来のアジアの危機にヨーロッパをはじめとする国際社会の協力を期待することは難しいでしょう。難民受け入れについては極めて消極的と言われ続けてきた日本が、今回は単なる「支援」を越え、自ら難民受け入れの苦労を分かち合う姿勢と覚悟を示すことは、外交的にも重要な意義を持つ決断となると考えます。
三点目は、日本の危機管理能力の確立の観点からの意義です。台湾有事をはじめ将来の東アジアにおける危機シナリオを考える上では、いざという時の難民対応の能力を平時から構築し、整備しておく必要があります。言葉の問題をどうするか、就職の問題をどうするか、子供の教育はどうするか、恒久的に受け入れるか一時的な対応に留めるか。様々な難しい論点が出てくるに違いありません。だからこそ、今回のウクライナ難民への支援を通じ、日本の難民対処能力を磨き、現実的に国内で受け入れ可能な規模やそれに伴う予算の目安、社会体制の整備など危機管理態勢の強化を急ぐべきと考えます。
賛否両論ある難しいテーマだと思いますが、剥き出しの「力」を背景にした新たなリアリズム外交の時代に、怯まずに備えを進めるのが我々政治家の責任です。今週、党内でも提起して参りたいと思います。」
Facebook 2022年2月27日投稿より
難民受け入れの所管は外務省と法務省にまたがる難しい問題です。週明けの自民党の外交部会や司法制度調査会のスケジュールを確認し、早速この問題を訴えさせていただきました。もちろん全員が賛成とはいきませんでしたが、ウクライナのために日本もさらに連帯していきたいという強い思いが党内に広がっているのを感じました。佐藤正久外交部会長や人権外交プロジェクトチームの鈴木憲和座長も「これは重要な問題だ」と受け止めてくださり、3月2日のプロジェクトチームの集まりにも呼んでいただき、難民受け入れへの提言を取りまとめる運びとなりました。並行して野党からも同趣旨の声が上がり、衆議委員法務委員会では古川法務大臣から、前向きに対応を検討する旨の踏み込んだ発言がありました。
こうして政府内、党内、国会にて急速に機運が形成され、2日夜には、岸田総理による歴史的な受け入れ表明が発表されました。
日本の大きな政策転換は、海外でも大きく評価されています。早速、米国の主要メディアからの取材を受けましたが、開口一番「今回のウクライナ侵攻に関して、日本は経済制裁や難民受け入れなどこれまでにないほど積極的な行動と意見表明が目立っている。何が変わったのか?」と質問されました。露骨な力による現状変更を目の当たりにし、多くの日本人はウクライナで起こっていることを他人事と捉えず、日本も国際秩序維持の責任を担っていくべきだと考えていると思うとコメントしました。
ただ問題はこれからです。実際の受け入れにあたって、居住場所をどう確保するか、言葉の壁を超えてどう生活をサポートしていくか、地域の人たちとどう関係を築いていくか、身の安全や治安をどう守るかなどなど、課題は山積です。心強いことに、総理が方針表明した翌日以降、早速複数の企業が避難民の受け入れ協力を発表するなど、民間から続々と支援の声が上がっています。受け入れ後のケアまで含めたしっかりとした準備を官民一体となって進めていかなければなりません。自民党内でも、引き続き避難民受け入れ後の態勢構築に向け、さっそく検討を深めていく予定でいます。
私の意見や行動の影響は本当に微々たるものかもしれません。でも、今回の総理の決断において、少しでもこの歴史的な判断を後押しすることができたのであれば、大変有難いことです。 問題意識を持ち声を上げれば必ず政治に届き、現実を変えていける。それを信じて頑張れる。大きな危機の時代が始まろうとする今だからこそ、そのことをぜひ皆さんにも実感していただければ嬉しいです。
ウクライナの皆さまの無事と、1日も早い戦禍の収束を祈り、これからも自分にできることをして参ります。また色々皆さんのご意見も聞かせてください。