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3月30日、自民党デジタル社会推進本部のNFT政策検討プロジェクトチームによる「NFTホワイトペーパー Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略」が、部会で了承されました。
本年1月から駆け足の3ヶ月。同期の仲間たちと一緒に、国会議員として、新たな政策提言の起草に初めて本格的に携わらせて頂き、貴重な経験となりました。
しかしこの分野に馴染みのない方からすれば、「NFT」や「Web3.0」といった言葉は、まるでイメージが湧かないかもしれません。今回いったい何を提言しようとしているのか、できるだけ分かりやすくお伝えしてみたいと思います。
現代がインターネットやデジタル隆盛の世の中なのは、誰もがご承知の通り。その進展には段階があると言われていて、最初は電子メールやウェブサイトを多くの人が使うようになった「Web1.0」の状態が生まれました。テキスト中心で発信者と閲覧者が固定されていた時代ともいえます。
次いでスマートフォンやSNSが登場して「Web2.0」時代がやってきました。TwitterやFacebookなど巨大なプラットフォーマーと呼ばれる企業の提供するサービス上で、メッセージや映像・写真などが双方向で簡単にやりとりされるようになりました。現在の社会はここに位置します。
そして、そうしたこれまでのデジタル経済圏の構造を根底から覆すのではないかと言われているのが「Web3.0」。まだ新しい概念のため、定義は人によって異なりますが、ブロックチェーンと呼ばれる新しい暗号技術により、巨大企業に依存しなくても、データを多くの個人間で分散管理できるようになると言われています。「メタバース」と呼ばれる三次元空間のサービスやビットコインなどの暗号資産を使った商取引が爆発的に増えることが予想されています。
Web3.0時代の起爆剤になると考えられているのが、NFTです。
NFTとは、Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略称。思い切って簡略化して言ってしまえば、インターネットやデジタル経済の中で資産の価値を担保する証票。それがNFTです。自分が何らかのデジタル資産を持っているとき、NFTを使ってそれに証票を貼っておけば、「これは唯一無二の本物ですよ」と主張できることになります。
つまりデジタル資産にNFTを付せば、希少性や真正性が証明できるので、安心して商取引ができる。現在、NFT市場は急拡大しており、全世界で2020年に400億円弱だったのが、21年にはすでに4・7兆円以上と急拡大しています。
日本はアニメやゲームなどの知的財産が豊富ですから、NFTビジネスやWeb3.0で世界をリードするポテンシャルが充分にあります。また、私はNFTや暗号資産などの技術が、地方活性化の新たな可能性を開くことにも期待しています。例えば、新潟県長岡市の山古志地域では、市の公認のもとNFTアートを制作・販売し、販売益を地域の活動財源に充てるとともに、購入者であるNFTホルダーが地域づくりに参画できるような取り組みを進め大きな注目を集めています。Web3.0の新しいデジタル経済圏は、地方にとって新しいチャンスの場となる可能性を秘めています。
こうした問題意識の下、官民の知恵を結集して、日本がWeb3.0時代のイノベーションの牽引役になるための下地をつくろう。そんな考えから、今年1月、平井卓也本部長の号令の下、今回のホワイトペーパー策定の試みがスタートしました。
しかし、新たな経済のフロンティアをめぐって世界との熾烈な競争は既に始まっています。3月9日に米国バイデン大統領が、暗号資産の在り方を総合的に見直す大統領令を出しました。180日で政策を取りまとめるよう求めるもので、これは米国がWeb3.0時代も主導権を握ろうと本気になった合図と読み取れます。
GAFAMと呼ばれる米国のプラットフォーム企業に覇権を握られぱなしだったWeb2.0時代の過ちを繰り返してはならない。そうした危機感から、私は大統領令の2日後、財務金融委員会の質問に立たせていただいた際に、Web3.0への対応を国家戦略に据えるべきではないかとの提案をさせていただきました。
鈴木俊一財務大臣からは、デジタル資産の対応について「優先的に」政策を進めていただけるとの、踏み込んだ答弁をいただきました。たいへん勇気づけられると共に、早いタイミングで具体的な政策提言を政府に届ける重要性をあらためて確認した瞬間でした。
今回のNFTホワイトペーパーの策定に当たっては、通常の自民党の政策づくりとは大きく異なるプロセスに挑戦しました。
多くの場合、党の政策調査会では関係者にヒアリングを重ねた上で、まずは担当省庁の官僚の方々が素案をまとめてくださります。それをもとに議員と担当省庁で話し合いを重ね、手を入れていき、ひとつの政策提言としてかたちをなしていきます。ところが今回のNFT及びWeb3.0の分野については、関係省庁が多岐にわたります。どの役所が先頭に立ちましょうかと聞けば、皆が顔を見合わせてしまうような状況です。
そこで今回は、平将明座長、小倉将信事務局長に相談の上、日頃からこの分野で実務をこなしている弁護士のメンバーにワーキンググループメンバーとして政策づくりに直接加わって頂きました。それぞれ専門分野の異なる一流弁護士の皆さんに、実際のビジネス上の相談や課題などに基づく論点整理をサポートして頂き、短期間で地に足のついた提言づくりを可能にして頂きました。
また同期のプロジェクトチームメンバーも、日銀出身の神田潤一さん、NTTドコモ出身の川崎ひでとさん、経産省出身で元三重県知事の鈴木英敬さんなど、優秀なメンバーがずらり。それぞれの経歴や専門性を活かしながら弁護士チームとタッグを組んで、分担しながら一緒にペーパーを書き上げていきました。もちろん、事実誤認がないよう、ファクトチェックは役所側にも手伝って頂きました。
徹夜して眠い目を擦りながらペーパーの最終チェックをしていると、まるで弁護士時代に戻ったよう。しかし、プロジェクトチームの先輩方や同期と力を合わせて、なんとか目標だった3月中に提言をまとめることができました。
以下はホワイトペーパーの「結語」です。
「新しい産業や技術に関する政策遂行には多くの不確実性が伴う。参考となる前例や、比較できる他国の取組がない場合は猶更である。しかし、政策の失敗や悪影響を恐れるあまり、数十年に一度の将来の経済成長の芽を摘むようなことがあってはならない。政治の責任でリスクを正しく見積もり、ゼロリスクでなくても前に進む覚悟で、Web3.0時代の責任あるイノベーションを推進していかなければならない。」
不安や恐れは挙げればキリがないものの、だからといって政治がイノベーションの邪魔をしたりせず、官民が課題とゴールを共有しながら、イノベーションを後押ししていける態勢を築こう。そうした我々の思いを込めています。
もちろんペーパーを出したから終わり、ということではありません。技術もビジネスも刻々と進化していくはずですから、これからも定期的にご意見やフィードバックをいただきながら、提言もアップデートしていく予定です。英語版も作成して海外との意見交換などもできたらと思ってます。
これからも、たくさんのアイディアやご意見お待ちしていますのでよろしくお願いします。
<報告書概要版>
https://bit.ly/3qSaaWH
<報告書本文>
https://bit.ly/3uALDXn
#NFT #Web3