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島の坂道と一杯のコーヒー

 梅雨が戻ってきたような長雨が続いています。各地で豪雨災害に遭われた地域の皆さまのご無事を祈り、心からお見舞いを申し上げます。

 先週末、久しぶりに興居島を訪ねてまいりました。
 高浜港からフェリーで10分。子どものころには、よく友だちと連れ立って、鷲ヵ巣海水浴場まで遊びに来ていました。真っ赤に日焼けして、帰りにいつも食べた名物のタコ飯は、本当にうまかった! 
 島の細く曲がった坂道は雨でぬかり、足元が悪い中を歩くのはなかなか大変です。かつて7000人以上いた島の人口は今は約1100人に減り、高齢化も進んでいますから、生活面でのご苦労も多いことでしょう。それでも道の要所には手すりが付いていて、地域で皆で工夫し助け合いながら暮らしている様子が窺えます。
 家々の玄関先にはお盆のお供えが綺麗にしつらえられて目を楽しませてくれます。ホオズキや素麺の束をあしらったり、島に特有の型があるようです。お団子やお菓子などお供えの内容が少しずつ家によって違うのは、きっとご先祖様の好みが反映されているのでしょう。

 長年ご縁を頂いてきた方々にお話をお伺いすると、島の生活の厳しい現状がヒシヒシと伝わってきます。

「今日は本当なら盆踊りの予定やったんよ」「集まって顔を合わせる機会が持てんのは、わしらにとって想像以上につらいことなんよ」(ご挨拶に伺った公民館長さん)


 盆踊りは雨が降れば室内で開催するのが常でしたが、コロナ禍の今年はそれもできずに中止に。昨年もできなかったので、久しぶりに島に帰ってくる子や孫と皆で楽しんできたお祭りが2年連続でできなくなってしまいました。
 祭りなどの行事ごとは、家族や村の人たちが憩い集い、互いのつながりを確認するうえでとても大切な行事。一日も早くコロナ禍を収束させなければいけないことを改めて強く確信しました。

「今年は大雨が続いとって、全く気が抜けん。」「団員の高齢化が進んどって、人の確保が大変なんよ」(島の消防団の幹部の方)


 先般の台風9号でも70ミリに及ぶ雨量があって、島内で土砂崩れなど起きないか引き続き警戒しているそうです。みかん畑や民家への被害を食い止めなくてはならないですし、万が一土砂で道路が寸断されたりすると、ライフラインが切れてしまって島の機能全体が麻痺してしまう懸念もあります。
 消防団では昨今、団員確保に苦心しています。松山市が定める消防団員の定年は原則65歳ですが、それでは高齢化の進む島では人員が確保できないため、特例で定年延長を認めてもらっているとのこと。現在島では70人ほどの消防団員が地域の防火や防災活動などに協力してあたっています。

「松山との交通手段が減ってしまって困っとんよ」(みかん農園を営むお母さんなど)


 かつては、松山との行き来はフェリーと海上タクシーがあったところ、先ごろ一軒だけ残っていた海上タクシーが廃業してしまい、心細く思っている人たちがたくさんいます。
 今は、20時ごろに最終便のフェリーが出てしまうともう行き来の手段がありません。塾からの帰りの便がない子どもがいたり、病院での用事が長引いて島に戻れなくなったりと、みなさん不便で困っているという切実な話を伺いました。官民で力をあわせて早急に取り組まなければいけない課題です。

 人口が減り、高齢化が進む島の生活は聞くほどになかなか厳しいものがあります。それでも多くの人々が島を愛し、前向きに工夫を重ねて、力強く暮らしていらっしゃいます。

「農業をやってみたいと考えている若い人は実は結構いるんです。」「法人化を通じ、初めての方でも最初から収入を安定させながら柑橘農業に入ってきてもらえる選択肢が増えるのではと考えました」(同年代の農業経営者の方)


 私と同年代で、もともと運送会社で部長まで務めていた男性は、実家の柑橘農業を継ぐため数年前に戻ってきて、島で最初の農業法人を立ち上げられました。柑橘農家は家族単位で営んでいるのが一般的ですが、そこを株式会社化し、新規に農家をやってみたいという若い人に門戸を開く狙いもあります。柑橘は野菜と違って収穫が出せるまでにどうしても数年単位の月日がかかるなど、参入障壁が高いのをなんとかしたかったそうです。
 既に今年、関東地方の若い方を採用されたそうで、手ごたえを感じておられました。同法人では、AI画像診断をつかった果樹選定などスマート農業の先進的な取り組みも注目されており、島でも新しい試みが芽吹き、実を結び始めていることを感じました。

「子どもの頃、よく遊びに来ていた思い出の島です。」「(コロナ禍でも)インターネットを通して東京からコーヒー豆の注文をいただいたりしています」(コーヒースタンドのオーナーの方)


 島のフェリー乗降場の真向かいには、お洒落なコーヒースタンドがあります。そこを営んでいるのは、もともとは東京の吉祥寺などでコーヒー豆の商いをして活躍しておられた方です。松山出身なので、地元に帰って商売をしようと考えたとき、若いころによく遊びに行っていた興居島のことが頭に浮かんで店を構えることにしたそうです。
 一杯ずつハンドドリップで丁寧に淹れるコーヒーは、風味が高くて身体に沁み渡り実に美味しい一杯でした。
 コロナ禍で島への往来が減る中でも、インターネットを通じて県外などへの販売も行っているとのこと。奥様と二人で、いいものをつくっていれば、どこにいても商売が成り立つ時代だということを、身をもって証明している姿がなんともたくましいです。

 人口減少、高齢化、頻発する自然災害、長引くコロナ禍。離島の暮らしは、決して楽ではありません。しかし、島の方々は細く曲がりくねった坂道を毎日のぼりながら、明るく前向きに、日々の暮らしの中で工夫を重ねておられます。課題に挑戦し、乗り越えて行こうとするたくさんの方々の声に、こちらが学びと元気をいただきました。そして、こうした声を、しっかり後押しできる政治でなければいけない、と改めて思いを強くしました。

 明日もまたたくさんの方のお話を聞きに、ひたすら歩いてまいります!

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